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 超電導ってなぁに?

超電導(超伝導)とはどんな現象なのでしょうか?
簡単に言うと
電気抵抗がゼロである
マイスナー効果が観測される
という2つの現象が観測されることが超電導であることに必要です。そして超電導状態に変わる温度のことを超電導状態になる温度のことを、臨界温度Tc (Critical Temperature)と呼びます。

【電気抵抗ゼロ】

電気抵抗というのは、電流が流れるのを妨げるので電気の一部が熱に変わってしまいます。流れている電流エネルギーが熱となって逃げるので、大きなエネルギーの損失になります。 超電導は抵抗がないので熱を発生することもなく、エネルギーの損失も起こりません。このため、流れている電流は永遠に流れ続けます。 ある特定の物質を混ぜ合わせて作った材料を冷やすと"電気抵抗がなくなる"という現象が起こります。これを超電導現象といいます。 さまざま物質には、超電導状態になる物質とならないものがあります。たとえば金、銀、銅などの物質は冷やすと電気抵抗は小さくなりますが、抵抗がなくなることはなく超電導にはなりません。

図-1
図-2

【マイスナー効果】

「超電導磁気浮上についてはコチラ」

図-4

超電導体の上に磁石を乗せると、重い磁石が下に落ちないで、まるで重力に逆らうように浮いている状態になります。これはマイスナー効果によるものです。  通常二つの磁石を近づけると、同じ極(NとN、SとS)が近づけば反発しあうし、異極(NとS)が近づけばくっついてしまうという現象がおきますが、超電導状態になっていると、反発しあうことも、くっついてしまうことも起こりません。

図-5

【臨界温度】

超電導状態になる温度のことを、臨界温度Tcと呼びます。1911年にカマリン・オンネス(オランダの物理学者)により、超電導という現象が発見されて75年間は-243℃を超えることはありませんでしたが、しかし1986年に、これまでよりずっと高温で超電導になる現象がベドノルツとミューラー(IBMチューリッヒ研究所)により発見されました。現在では-138℃で超電導になる物質まで発見されています。

■1985年以上臨界温度飛躍的に向上

図-6

【冷やす方法】

それまでは産出地域も限られていて、かつ非常に軽いため容易に空気中に飛散してしまう、液体ヘリウムを使って-269℃まで冷却して超電導状態を作っていました。 現在は超電導体のTcが上がったため、-196℃で安定した超電導状態を保つことが可能になりました。 このため、空気中に含まれている窒素を液化して作れる液体窒素で冷却すれば超電導が実現できるようになりました。その結果、超電導状態を保つコストが安価になり、応用の幅が増えました。

【超電導の特徴と応用】

 超電導の特徴

  1. 電気抵抗がゼロである
    • 電気を発電所から家庭、工場までロスなく送ることができる。
    • 超電導線材で閉回路を作れば、電流はいつまでも流れ続ける。つまり、電流が直接貯蔵できる。
  2. 強い磁場が電力消費をせずに発生できる
    • 各種電力、産業機器の小型化。 高性能化、省エネ化が可能となる。
  3. 高速のスイッチが作れる
    • 超高速、低消費電力のコンピュータやネットワークが実現できる。
  4. 弱い磁場を検出したり、磁場を遮断したりできる
    • 超電導脳磁計で脳の診断ができる。非破壊で材料の欠陥を高感度で検出できる。高感度磁場測定を可能とする磁気遮断が実現できる。

 超電導の応用

Tcが高くなることにより超電導応用の幅は広がり、様々な分野にわたっています。

  1. エネルギー:超電導線材を利用した送電ケーブル、コイル、発電機、電力貯蔵装置(SMES)、超電導変圧器、大型加速器、核融合装置など
  2. 交通・輸送:リニアモーターカー、超電導モーターを利用した船舶、車 など
  3. 医療:MRI、心磁計、脳磁計、NMRなど
  4. エレクトロニクス:ルーター、AD変換機、超電導コンピュータ、高速大容量通信システム、非破壊検査装置、地殻中金属資源探査装置など
  5. その他 :磁気分離水質浄化システム
図-9

【超電導と超伝導】

超電導と超伝導はどちらも正しい使い方です。 英語では[superconductivity]なので,直訳すれば超伝導の方がしっくりするでしょう。しかしながら電気抵抗ゼロで電流を流せるという現象を表す言葉として超電導と呼ぶのでこれも正しいのです。現在なんとなくできている"住み分け"として、基礎的分野の学会などの学術的な分野では「超伝導」を用いることが多く、産業界などの応用分野では「超電導」を用いることが多いようです。

【世界の言葉で超電導】

図-7

【補足解説資料】

超電導の基礎

超電導デバイス