線材・パワー応用研究部
超電導機器実用化、そのための線材開発を目指す
研究目的
- イットリウム系超電導(REBa2Cu3Oy)線材は、銅線やビスマス系超電導(Bi2Sr2Ca2Cu3Oy)線材では実現しえない 大電流通電や高磁場の発生が可能となるため、かつて無かった革新的機能を持った高温超電導機器の実現や、従来機器の小型・ 軽量化と共にエネルギー効率向上による省資源・省エネルギー化を図ることができます。
- 従来は、線材研究開発部において、イットリウム系超電導線材に関する高性能長尺線材作製プロセスの開発を進め、 磁場中臨界電流特性や低損失特性などで世界最高レベルの性能を有する線材の作製に成功しています。一方、電力機器研究開発部において、イットリウム系超電導線材を用いた機器の実現を目指した研究開発を実施し、SMES、送電ケーブル、変圧器などの電力機器の開発に目処を付けました。
- 平成25年4月からは、線材・パワー応用研究部として統合し、新たな領域である医療用コイル開発を中心として、高温超電導機器が競合機器に対して絶対的な優位性を確保するために必要な線材性能の向上と、それらを用いたコイル化技術の開発を目指しています。
研究テーマ
- 磁場中高臨界電流(Ic)線材長尺化技術開発
- これまでに開発された短尺での最高レベルの特性を実用レベルの低コスト・長尺線材で実現することをめざす。
- 超低発熱線材作製技術開発
- 線材が発生する交流損失、接続部で発生するジュール損失を抑制するため、線材特性の均一性向上、微細加工技術、簡便な超低電気抵抗接続技術、分割細線多芯線材の評価技術の開発を行う。
- 線材及びコイル基礎特性把握
- イットリウム系線材及びこれを用いたコイルの通電特性並びに磁化・交流損失特性及び磁場変動直後の短時間 の緩和を含む広範囲の時間スケールに亘る磁化緩和速度を把握する。
- 結晶粒高配向中間層付基板及び超電導線材提供
- コイル化技術開発に必要な様々な種類の線材を提供する。また、必要に応じて、中間層付金属基板、超電導線材、 材加工処理等の提供を委託業務として実施する。
主な開発プロセス
- 結晶粒高配向中間層付基板
- 金属基板上にIBAD(Ion Beam Assisted Deposition)層を主体とした中間層を用い、最上層にセリア(CeO2)キャップ層を配した構造において、結晶粒の高配向化、高速化、均一化、低コスト化等の技術開発を行う。
- Pulsed Laser Deposition(PLD)超電導線材作製技術
- 高い特性を得やすい特徴を持つPLD法を用いて、基板―ターゲット間距離、ターゲット組成、レーザ条件の適正化 等により、人工ピン止め点の制御を含めて、高性能化、高速化、低コスト化等の技術開発を行う。
- Metal Organic Deposition (MOD)超電導線材作製技術
- 低コストが期待できる特徴を持つMOD法を用いて、原料組成制御、中間熱処理の適正化等により、人工ピン 止め点の制御を含めて、高性能化、高速化、低コスト化等の技術開発を行う。
- 線材加工技術及び線材評価技術
- YAGレーザーによる切断加工、エキシマレーザーを用いたスクライビング技術に関して、細線化による低損失線材作製技術や低熱侵入線材の開発を行う。
また、連続抵抗法(Ic)測定装置、長尺線材高速・非接触評価装置、RTR-磁気光学観察装置、SQUID線材評価装置などを用いての評価技術の開発を行う。
主な開発成果
- PLD法による人工ピン止め点導入製材開発(EuBCO+BHO)
- TFA-MOD法による人工ピン止め点導入線材開発(YGdBCO+BZO)
- スクライビング加工による低損失線材加工技術開発
主要論文
- T. Izumi, “Achievements in M-PACC Project and Future Prospects on R&D of Coated Conductors in Japan”, Physics Procedia (2013).
- M. Yoshizumi et al., “Improvement of delamination strength of REBCO coated conductors”, Physics Procedia (2013).
- T. Machi et al., “New filamentarization technique for multi-filamentary coated conductors”, Physics Procedia (2013),
- T. Yoshida et al., “Fabrication of Eu1Ba2Cu3O7-?+BaHfO3 coated conductors with 141 A/cm-w under 3 T at 77 K by IBAD/PLD process.
- Y. Shiohara et al., "Overview of Materials and Power Applications of Coated Conductors Project," Jpn J. Appl. Phys. 51, 010007 (2012).
- 和泉 輝郎他, "イットリウム系超電導電力機器技術開発プロジェクトにおける線材開発の現状," 低温工学, vol. 46, no. 6, pp. 350-357 (2011).
- N. Sakai et al., "Delamination behavior of Gd123 coated conductor fabricated by PLD," Physica C 471, 1075 (2011).
- S. Miyata et al., "Surface roughness of MgO thin film and its critical thickness for optimal biaxial texturing by ion-beam-assisted deposition," J. Appl. Phys. 109, 113922 (2011).
- 塩原 融, "イットリウム系超電導電力機器の開発," 電気評論, vol. 95, no. 9, pp. 33-37 (2010).
- K. Nakaoka et al., "Relationship between crystallization process and superconducting properties of YBCO films by TFA-MOD method using starting solution with various compositions," Physica C 470, 1242 (2010).
- Y. Yamada et al., "Long IBAD-MgO and PLD coated conductor," Physica C 469, 1298 (2009).
- T. Izumi et al., "Development of TFA-MOD Process for Coated Conductors in Japan," IEEE Trans. Appl. Supercond. 19, 3119 (2009).
- M. Yoshizumi et al., "High production rate of IBAD-MgO buffered substrate," Physica C 469, 1361 (2009).
- A. Ibi et al., "Development of long REBCO coated conductors with artificial pinning centers by using MPMT-PLD method," Physica C 468, 1514 (2008).
- 塩原 融他 ”Y系線材開発の現状と応用へ向けた展開” 日本金属学会誌 第71巻、第11号(2007) p993
- Y. Yamada et al. “GdBaCuO and YBaCuO Long Coated Conductors by IBAD-PLD” IEEE Transactions on Applied Superconductivity, 17 (2007) p3371
- T. Izumi et al. “Progress in Development of Advanced TFA-MOD Process for Coated Conductors” Physica-C, 463-465 (2007)p510